第5節 リゾート開発の理論的基礎


はじめに

 1987年6月に、総合保養地域整備法(いわゆるリゾート法)が制定されてから2年あまりが経過した。現在全国で22ヵ所の整備地区が国によって承認され、リゾート地建設がスタートした。この行政レベルのリゾート建設とは別に、主として民間資本によってリゾート地づくりが活発に進められており、いままさに我が国は、リゾートブームの渦中にある。
そこでは、自然破壊、地価急騰、行政負担の増大など、様々な弊害が指摘される一方、リゾート開発による地域振興にかける地元、自治体の期待が伝えられている。いわゆるテクノポリス建設が進められる中にあって、今回打ち出されたリゾート開発構想は、わが国の地域開発史上いかなる意味を持つものであるのか、これが本稿での第一の課題となる。
 第二は、1985年秋のG5以降の急激な円高傾向に直面して、「前川リポート」によって示されたいわゆる内需主導型の経済構造を進めるうえで、今回のリゾート開発がどのような位置づけを与えられているのかが課題である。すなわち経済構造調整下のリゾート開発の役割である。
 第三は、リゾート開発の経済的基礎ないしは実体に関する理論的究明である。この点はこれまでほとんど触られることがなかったと言ってよく、本稿においては、不動産資本の理論的吟味を行うことで、この課題にアプローチしようとした。
 国民所得水準の向上、労働時間の短縮、さらに国民の余暇活動に対するニーズの高まりなどを背景にして、今後、観光、レジャー、リゾート開発にかけられる期待はますます大きくなるに違いない。リゾート開発の意義は、結局地域振興の角度から判断されるべきだというのが、本稿での基本的な視点である。この解明を待って、リゾート開発のあり方が問われるべきである。
 また、現在進められているリゾート開発とは異なる、既存の観光業者の現状と今後のあり方を考えなければならない。大手リゾート資本による開発もさることながら、地元観光業者をベースにした、日本型のリゾート開発も今後検討されてよいと考えるからである。
 以上、リゾート開発列島と称される、地域開発の今日的状況の中にあって、様々な問題を試論的に考察することが本稿の課題である。

1、地域開発政策の変遷とリゾート構想

 ここでは、リゾート開発構想の歴史的位置を明確にするために、わが国の地域開発の歴史を簡単に振り返っておきたい。
 地域開発とは、「全般的危機の時代に入って、地域経済の不均等発展が進み、地域経済の矛盾対立が激化する中で、独占資本がその支配圏を拡大し、支配体制を維持するためにとる地域政策であり、独占資本の投資戦略の一環としての性格をもつ」(土肥秀一、『地域開発』と広域行政」吉岡健次、和田八束編『現代地方財政論』有斐閣、昭和50年、157頁)とされる。ここでは、地域開発政策についての、これ以上立ち入った検討は行わず、上の引用に見られるように、大手企業の投資戦略に対応した、国家ないし地方自治体の巨大プロジェクトという角度から見ていくこととしたい。
 第2次世界大戦後の地域開発政策は、1950年の国土総合開発法にもとづき特定地域総合開発計画をもって始まるが、これは奥地河川に多目的ダムを建設し、後進地域の経済発展を図ろうとするものであった。しかし、発電関係に事業資金が集中投下され、電源開発のみが独走し、朝鮮特需で復活の契機をつかんだ大手資本の復活、発展に資する結果となった。特定地域指定は、最初、開発効果の高い2カ所に限定される予定であったが、結局政治判断により、51カ所の候補地から、北上、天竜・東三河など21カ所が指定されることとなった。指定地域への経済的波及は一時的なものにとどまり、その多くは現在過疎地域として衰退の極みにある。
 その後、太平洋ベルト地帯への経済力集中にともない、地域開発政策の課題が、鉄道、道路、港湾、工業用水、団地など社会資本の整備、充実におかれるようになり、1960年の所得倍増計画、1960年の太平洋ベルト地帯構想などによって、これを進めるものとされた。
 1962年に過大都市問題、地域格差問題を解決すべく策定された全国総合開発計画は、地方に工業を分散させるために、工業拠点開発方式を取り入れた。同年5月の新産業都市建設促進法は、この拠点開発を進めるために作られたもので、全国に10カ所程度、産業基盤と都市機能を具備した中核都市を作ろうというものであった。結局39道県から44カ所の候補地が出され、史上希な空前の陳情合戦の末、水島、鶴崎など15カ所が地域指定され、指定からもれた地域は、鹿島、東駿河湾など6カ所が工業整備特定地域として追加指定されたのであった。
 こうして、日本経済は世界にも希な、重化学工業と加工組立型産業を中心とする高度成長を遂げることになるが、このプロセスで生じた都市問題、過疎問題、公害問題、国土の乱開発など地域問題が国内政治の最大の焦点になるに及んで、1969年には、新全国総合開発計画が策定される。これは、鉄鋼、電力、石油などの基礎資源型の大規模臨海工業地域を建設し、これを新幹線、高速道路、航空など高速ネットワークとデータ通信網で、中枢管理都市としての東京と結ぶことによって、上の問題を打開しようとするものであった。
 1972年、田中内閣の日本列島改造計画により工業再配置政策が打ち出されるが、これは土地買い占めによる空前の地価上昇と国土の乱開発を招来し、工業再配置促進法による中核工業団地作りも、1973年末の第1次オイルショックとその後の不況によりとん座してしまった。
 安定成長期に入った1977年には、福祉型開発と称される第3次全国総合開発計画が策定され、従来の地域開発政策に見られなかった定住圏構想が打ち出された。これは居住区を生活のミクロの単位とし、それを含む定住区と、さらに広域な定住圏(人口20〜30万、全国に200〜300カ所想定)に工業を分散させるとともに、住居、教育、文化、医療など生活関連施設を整備することが中心となっていた。このように、地域開発政策における産業基盤優先から生活基盤重視への一定の軌道修正が試みられることになるが、導入すべき工業の性格にあいまいさを残すこととなったため、十分な成果を上げるには到らなかったと言えよう。
 1980年には、通産、国土、農水、建設の四省庁の所管になる高度技術集積都市建設促進法によるテクノポリス建設が進められるところとなり、現在、青森、浜松、大分など全国18カ所で建設が進められている。テクノポリス構想は、オイルショック以降の産業構造の転換期に本格的に出現した、いわゆるハイテク産業群を全国的に立地させ、あわせて大学、研究所などの学術部門と、居住空間を三位一体で整備促進させ、地域技術の高度化を推進しようというものであった。単なる工業開発、分散とは異なる新しい発想に基づく政策への転換ととらえられよう。現在いわゆる頭脳立地法によって、本構想の支援が行われている。
 以上、戦後地域開発政策の簡単な考察によっても明らかなように、その基本的手法としては拠点開発方式をとっていること、現実の工業立地動向を後追い的に誘導、その限りで大手企業の投資戦略に従属していること、従って生活基盤投資が節約され、居住環境面の整備が課題とならざるを得ないこと、などを指摘することが出来る。いわゆるリゾート開発構造が、戦後地域開発史上の一時代を画するものとなるかどうかは、ここでは即断することはできないが、少なくとも、以上のような延長線上において考察される必要があるように思われる。

2.リゾート法の背景と役割

(1) 内需拡大による経済構造調節策の切り札

 リゾート開発は、内需拡大による、経済構造調整策の切り札としての役割を担って登場した。いわゆる「前川リポート」(「国際協調のための経済構造調整研究会報告」1986年4月7日)では次のように述べられていた。

 「戦後40年に我が国は急速な発展を遂げ、今や国際社会において重要な地位を占めるようになった。 我が国の大幅な経常収支不均衡の継続は、我が国の経済運営においても、また、世界経済の調和ある発展という観点からも、危機的状況であると認識する必要がある。
 経済収支の大幅黒字は、基本的には、我が国経済の輸出指向等経済構造に根ざすものであり、今後、我が国の構造調整という画期的な施策を実施し、国際協調型経済構造への変革を図ることが急務である。
 この目標を実現していく過程を通じ、国民生活の質の向上を目指すべきであり、また、この変革の成否は、世界の中の我が国の将来を左右するとの認識が必要である。
 国際協調型経済を実現し、国際国家日本を指向していくためには、内需主導型の経済成長を図るとともに、輸出入・産業構造の抜本的な転換を推進していくことが不可欠である。 
 外需依存から内需主導型の活力ある経済成長への転換を図るため、この際、乗数効果も大きく、かつ個人消費の拡大につながるような効果的な内需拡大策に最重点をおく。
 住宅政策の抜本的改革を図り、住宅対策を充実・強化する。特に、大都市圏を中心に、既成市街地の再開発による職住近接の居住スペースの創出や新住宅都市の建設を促進する。
 その際、民間活力の活用を中心に、事業規模の拡大を図る。そのためには、規制緩和の推進、呼び水効果としての財政上のインセンチィブが必要である。
 経済成長の成果を賃金にも適切に配分するとともに、所得税減税により可処分所得の増加を図ることが個人消費の増加に有効である。また労働時間の短縮により自由時間の増加を図るとともに有給休暇の集中的活用を促進する。労働時間については、公務・金融業の部門における速やかな実施を図りつつ、欧米先進国なみの実施と週休2日制の早期完全実施を図る。
 地方自治体による資本形成の大幅な増加を図ることは、内需拡大の効果を全国的に広げるために不可欠の政策である。」(以上、「前川リポート」より抜粋)

 「前川リポート」を受けて、各省庁がリゾート開発構想をあいついで発表するが、これは、「リゾート法は、政治家が”つくれ”と圧力をかけて、行政が動いた」とされている。通産省が、リゾート法のもととなる「大規模複合余暇施設整備事業構想」を発表する前の85年7月に、国会議員の政策集団であるFFS(自由主義経済推進機構)は、「緑陽日本構想」を発表し、その中で大規模リゾート整備を提言している。(「月刊ウィークス」1989年5月号、20ページ)
 大規模リゾート建設促進議員連盟事務局長の浜田卓二郎衆議院議員は、この間のいきさつを、「田園都市」(1987年8月号)の中で、以下のように述べている。
 「3年前に、宮沢大蔵大臣が、資産倍増論を唱えたのが発端だ。そこでは、日本経済のフローは豊かになったが、住宅・都市関連施設、余暇、健康などのストックは不十分で、これを蓄積することが、日本経済を豊かにする前提だとされていた。」
 やがて、『緑陽日本構想』(グリーン・シャイン構想)が、議論をリードするようになり、その中では、ふりそそぐ日差しと目にしみる緑あふれる環境の中で、すこやかで、深く精神に根ざした生活を存分に追求できる日本をつくるために、具体的な投資の方向などを検討し、日本経済が空洞化した後の労働供給などについて提言した。
 これを通産省、国土庁にレクチャーしたところ、そうした動きとなり、霞が関官庁に定着した。そして昨年(1986)、民間活力利用法案として提案され、この中にリゾート施設などが入っていたが、最終的に落ちた。しかし、昨年一転してリゾートブームに乗って、建設、運輸、通産、農水、国土、自治の関係6省庁による法案提出競争となり、自由主義経済推進機構が発起人となり、国土庁の後押しで法案ができたのである。(以上要約)

 各省庁が出した構想は以下の通り。
 建設省:複合リゾートカントリー整備構想
 通産省:余暇関連施設整備構想
 運輸省:レクリエーション港湾整備構想(港湾局)、アトラクチィブ・リゾート21構想(観光部)
 農水省:農山漁村リゾートゾーン整備構想
 国土庁:広域リゾートエリア整備構想
 自治省:大規模広域リゾートゾーン整備構想
 
 この6省庁7構想は、いずれも、「ゆとりある国民生活の実現と地域の振興を図るため、特別の立法措置を講ずることにより、民間活力を活用しつつ、長期滞在型の複合的な機能を備えた大規模なリゾート地域を整備しようとするものであり、整備手続きや政策手段においても、おおむね共通するもの」(須貝俊司、「総合保養地域整備法の概要」『都道府県展望』1987年7月号)であったと言われている。

(2)リゾート開発の手法

 第3章で、リゾート開発を進める民間主体である、いわば「リゾート資本」とでも呼ぶべきものの実態に触れるが、ここではその前提として、1987年6月に制定された「リゾート法」の概要をみておく。
 「リゾート法」第1条は、この法律の目的を次のように規定している。
 リゾート開発が進められる地域は、「良好な自然条件を有する土地を含む相当規模の地域」(概ね15万ヘクタール)であるとしている。第3条は、当該地域を別途詳細に規定しているが、それは、以下の5つに該当する地域であるとされている。
 
 @良好な自然条件を有する土地を有する土地を含み、かつ、特定施設(スポーツ、レクリエーション施設、教養文化施設、休養施設、集会施設、宿泊施設、交通施設、販売施設などを言い、このうち民間業者が設置、運営するものを特定民間施設とされている)の総合的な整備が可能な相当規模の地域。
 A自然的経済的社会的条件からみて、一体として整備することが相当である地域。
 B土地の確保が容易であること。
 C産業、人工の集積の程度が著しく高い地域以外の地域。
 D特定民間施設の整備が確実と見込まれる地域。
 
 以上の地域について、第1条では、「国民が、余暇等を利用して滞在しつつ行うスポーツ、レクリエーション、教養文化活動、休養、集会等の多様な活動に資するための、総合的な機能の整備を、民間事業者の能力の活用に重点を置きつつ促進する措置を講じる」、とされている。そして、「ゆとりのある国民生活のための利便の増進並びに当該地域及びその周辺の地域の振興を図り、もって国民の福祉の向上並びに国土及び国民経済の均衡ある発展に寄与する」、とされている。
 前項でみた内需拡大による、わが国経済構造調整に果たす役割が明記されているとともに、地域開発政策の永年の課題である地域振興の夢も込められた目的となっている。
 次に、リゾート開発にいたる手続きについては、まず国(国土、農水、通産、運輸、建設、自治の各大臣が主務大臣となる)が、リゾート整備に関する基本構想を策定するものとされている。(第5条)この基本構想には、以下の事項を定めるものとされている。
 
 @特定地域の区域
 A第1条に規定する整備の方針に関する事項
 B重点整備地区(特定地域のうちで特定施設の整備を特に促進する地域で、概ね3000ヘクタール)とその整備の方針。
 C重点整備地区で整備されるべき特定民間施設、特定施設、重点整備地区間を結ぶ交通施設の設置に関する基本的事項。
 D公共施設の整備の方針。
 E第1条に規定する産業振興方策。
 F土地の確保に関連して実施される農用地の整備に関する事項。
 G自然環境の保全との調和、農林業の健全な発展との調和、居住機能との調和、観光業の健全な発展、地価の安定などの事項。
 
 これらを盛り込んだ基本構想が国へ提出された場合、主として以下2点に該当するとき、国は同基本構想を承認するものとされている。
 
 @第3条の用件に該当し、基本方針に適合すること。
 A当該特定地域およびその周辺地域に対して、適切な経済的効果を及ぼすこと。

  リゾート開発が行われる地域については、国および地方自治体は、適切な措置を講じるものとされ、税、財政、金融上の次の規定を設けている。一定の特定民間施設に対し、法人税の特別措置、特別土地保有税の非課税、事業税の非課税ないし軽減。

3.リゾート開発の経済的基礎

 現在リゾート建設に着手し、将来にも計画を持っている企業は、表1に掲げる通りである。

表1 企業別リゾート計画・構想
社名計画・構想
大林組アルファリゾート・トマムで、北海道初の超高層ビルを建設した実績を持つ。ゴルフ場の建設・運営にも注力中。
清水建設横浜市金沢区の人工島・八景島(24万平方米)で、大規模レジャーランド開発に参画。外房地域リゾート整備構想研究会にも、三井不動産などと共に参画。
佐藤工業群馬県の草津町と長野県に、マンションを建設中(88年秋着工)。千葉県鴨川市で、ホテルや別荘を核とした、複合リゾート(敷地面積約12ha)を開発する計画。
飛鳥建設関連会社ナナトミが、いわき市でクワハウスを核とする総合リゾート施設を建設。長野県乗鞍で、約100haのリゾート開発を計画。
鹿島建設子会社・鹿島リゾートが蓼科高原で、「蓼科チェルトの森」を展開。 10年後には、1,800戸の別荘とレジャー施設が揃ったリゾート地に育てる計画。湯沢でもリゾートマンションを建設中。
不動建設三重県南勢町にマリーナ、ホテルを中心としたリゾート(敷地面積330ha)を開発する計画。89年夏の着工予定。千葉県海天津小湊町に、日本拓建と共同で別荘やコンベンション施設、スポーツ施設を備えたリゾート(敷地面積約400ha)を建設する計画。90年着工、95年部分完成、2000年に全面完成を目指す。徳島市が計画している、大規模総合レジャー基地「ヘルスケア型マリンリゾートシティー構想」にも参画。
三井建設島根県・松江で、スキー場を核とするリゾート開発を進める計画。
日英建設1987年春、熱海市にリゾートマンションを建設し、リゾートに進出。89年夏には湯沢、稲取温泉、湯田中(長野県)で、相次いでリゾートマンションを完成。
日本鋪道長崎県土井の浦半島で、ホテル、マリンパーク、テニスコートなどを中心とする、長期滞在型のリゾート施設を建設中。1990年秋にオープン予定。
青木建設興銀などと共同で、佐賀県有田町に大規模レジャーランドを建設する計画。メキシコでも大規模リゾートの受注に成功。世界各国でホテル事業を展開中。
日本国土開発長崎県で進められている、長期滞在型リゾート「長崎オランダ村」開発に参画。マリンリゾートにも意欲的。
福田組スキー場の建設に実績。スキー場を中心に、オールシーズン型の大型リゾートを開発する計画。
鐘紡イタリアのフィラスポーツと提携し、スポーツ、レジャー、イベントの企画・運営を事業化。大規模スポーツ施設を中心にした、新タイプのリゾート開発を進める計画。
三菱化成西武鉄道グループと提携。北九州市の社宅跡地(10万平方米)に、滞在型リゾート施設(ホテル、スポーツ施設など)を建設する計画。
日立化成子会社、日立化成テクノプラントが、福島県磐梯町大規模リゾート開発計画(第3セクター方式)に参画。総事業費は1,100億円の予定
新日本製鉄八幡製鉄所の敷地の一部に、レジャーランド「スペースワールド」を建設。 90年春オープン予定。札幌市に、音楽リゾート都市建設を計画。「君津市リゾート研究会」にも参画。
川崎製鉄「銚子マリンリゾート研究会」に参画。屋久島の観光開発にも参加。
日本鋼管静岡県・河津町温泉保養施設、スポーツランド、海洋レジャー基地から成る、大規模レジャー基地「リフレッシュ・リゾート河津」を、大成建設などと進める計画。
ミサワリゾートミサワグループにおけるリゾート戦略の前線基地。与論島で海洋リゾート基地を開発。ゴルフ場の開発にも注力中。
三井金属岡山県の精錬所跡地に、ゴルフ場や遊園地を中心とする、レジャー基地を建設する計画。
住友重機横須賀市の川間ドック跡地(約13万平方米)に、マリーナを中心とする大規模海洋レジャー基地を建設する計画。91年3月開場予定。
松下電産子会社・松下興産がリゾート開発を推進。新潟県妙高村で、ホテル、スキー場、テニスコートなどを備えた、通年型リゾートを展開中。和歌山県、北海道夕張など各地でリゾート開発を計画。
三井造船岡山県玉野市の事務所(開発面積150ha)に、海洋レジャー基地を建設。89年4月開場。
石川島播磨兵庫県相生市の造船所周辺の遊休地に遊園地を建設。これを中心にリゾート開発を推進。
伊藤忠商事箱根・仙石原にリゾートマンションを建設。「シーアイヴィラ」の名前でシリーズ化し、年間2棟程度の供給を目指す。
丸紅和歌山県田辺市と共同で、田辺湾総合リゾート開発を進める計画。陸域130ha、海域30haの土地に総事業費約1000億円を投入し、マリーナ、リゾートホテル、シルバーマンション、人工ビーチ、フィッシングパークなどを建設する予定。関西国際空港が完成する93年春に第一次オープン、 2000年に全面オープンを目指す。
三井物産沖縄県安室島野リゾート開発(開発面積55ha)に参画。
藤和不動産那須高原でリゾート事業を推進中。
京浜急行福島県でスキー場併設のホテルを手掛けている。
富士急行福島県でスポーツ・レジャー施設を備えた、大規模リゾート(開発面積155ha)を開発中。
名古屋鉄道渥美半島の海洋リゾート開発(第3セクター方式)に参画。
日本郵船西武セゾングループと提携し、遊休地に、リゾート基地を建設する予定。
淡路フェリーボート淡路島でリゾート開発を推進。
ヤマハ三重県志摩で早くからリゾート「合歓の郷」を手掛けている。
全日空沖縄県石垣島でホテル、ゴルフ場を買収。リゾート事業に本腰。


 三菱総合研究機構事業戦略研究室矢島室長は、リゾート開発を行う企業を、次の三つのグループに分類している。
 第一は、重厚長大産業で、ここでは企業の再構築や、従業員対策の一環として行われている。これらの企業は、注目されているウォーターフロントに、償却の済んだタダの土地を持っている強みがある。
 第二は、不動産、ゼネコン(大手建設会社)、商社など、デベロッパーとしてのハードは持っているが、運営ソフトは持っていない企業。
 第三は、東急や西武のように、これまで実績のあるところが、古い施設のリニューアルや新規開発をしているグループ。
 そして今、熱心に動いているのは、第一と第二のグループであるとされている。(「月刊ウィークス」、前掲、22ページ)
 表2は、現在リゾート構想が進展している1道13県の開発構想の概要である。これらプロジェクトに参加している企業のほとんどは、上のグループのいずれかに該当する。今、ここでは、これら企業を一応、観光・リゾート、不動産、建設、重厚長大、電鉄、商社、その他の5つのグループに分類して整理すれば、表3のようになるであろう。

表3 リゾート開発を手がける企業一覧
観光リゾートフェニックス国際観光、浅間スポーツ、森ビル観光、那須高原リゾート開発、上越観光開発、三陸リゾート開発、サホロリゾート、ミサワリゾート、瀬戸内リゾート、日本交通公社、藤田観光、湘南観光開発、豊鉄ホテル、インターリゾート島根、城山観光、筑肥観光、東海観光、東急ホテル
不動産藤和不動産、西洋環境開発、第一不動産、西武不動産、三菱地所、住友不動産、長谷工
建設清水建設、大林組、飛鳥建設、鹿島建設、不動建設、三井建設日栄建設、日本舗道、青木建設、日本国土開発、福田組、長谷川工務店、大和ハウス工業、熊谷組、東急建設、大成建設、朝日住建
重厚長大(素材)佐藤工業、鐘紡、三菱化成、日立化成、新日本製鉄、川崎製鉄、日本鋼管、三井金属、住友重機、松下電産、三井造船、石川島播磨、日本セメント、小野田セメント、藤田工業、NKK、新田鋼材、マツダ
電鉄(運輸)京浜急行、富士急行、名古屋鉄道、日本郵船、淡路フェリーポート、全日空、近鉄、西武鉄道、東武鉄道、東急電針、宮崎交通、秩父鉄道、JR、伊豆箱根鉄道、山形交通、東武交通、紀州鉄道、近江鉄道、南海電鉄
商社伊藤忠商事、丸紅、三井物産、三菱商事、川鉄商事、加ト吉商事、横尾物産
その他ヤマハ、年金福祉事業団、セゾングループ、埼玉銀行、ダイエー、興銀、三井信託


 ところで、リゾート開発を手がけるこれら企業の行動様式、立地戦略を究明することが、本稿のテーマである。
 今、松原宏著『不動産資本と都市開発』(ミネルヴァ書房、1988年)によりつつ、この点を考えてみよう。



 松原氏は、同書で不動産資本を、「建設部門を外注すると考えると、不動産資本に残る本来的機能は、開発地域の位置選定、開発の基本計画の策定といった作業である。そこで、ここでは、土地・空間の商品化を意図して、空間を選定し、開発・改善する資本」と定義づけ、さらに、その自立化の根拠を、「資本と人口の集積に伴う土地・空間の開発・整備の必要性の高まりと、通常の商業資本が扱う商品とは異なる土地・空間商品の特殊性」に求めている。
 そして、松原氏は、資本の循環の中での、不動産資本の位置を次のように示している。しかし、リゾート開発は個人消費に関わるものであるから、うえの式は次のように書き換えられる必要がある。




 リゾートホテル、リゾートマンション、別荘の利用・購入、ゴルフ場、マリーナ、スキー場の利用など、各種各様のリゾート施設の家計による利用、購入こそが、リゾート資本の利潤の「源泉」であり、S1に場所的差異がないとすれば、この利潤の極大化は、GRとBRが位置と周辺環境などの空間的位置の違いによって決定されることとなる。
 GR(地代、土地購入費)の位置的差異について言えば、まず、広大で安価な土地が、優良な自然環境とともに存在しているところが対象となり、販売や利用の有利性、将来の値上がりといった点では、既存の観光地ないしは、その周辺が対象となる。立地条件のよい土地の先行取得は地価の上昇を招き、それが住宅地、商業地へも波及し、地元民の新規取得を困難にする。ここから、既存の観光・レジャー産業との競合関係が生じることとなる。また、利潤の源泉が「家計」であるから、リゾート地へのアクセスの容易性、つまり新幹線、高速道路、空港への近接性が条件となり、大消費地である大都市圏の周辺、あるいは空港へのアクセスの容易な地域が対象となるであろう。ちなみに、越後湯沢は、東京駅から新幹線で1時間15分、熱海は50分である。
 リゾート開発は家計における個人的消費に入り込むので、各種施設にともなう、水道、道路、ゴミ処
理、消防などの各種生活基盤がワンセットで整備される必要があり、自治体の公的負担を伴うので、単
独進出よりも複数の第3セクター方式をとることが多くなる。単独進出では、これら生活基盤は地元の後
追い的負担となる。リゾート開発は、このようなリゾート資本の空間的運動の支援システムである。
 リゾート開発に関わる土地・空間的商品の再生産は同一の地域で行うことはできないので 、他の有利
な開発投資を求めて、虫食い的に開発が行われる。
 リゾート開発資本の利潤の源泉である、建築地代(BR)は、そのグレードに依存するところが大き
く、良好な自然環境、景観への進入により、自然破壊の危険性をともなう。高級リゾートマンションは
、グレードアップをねらうものであり、日照権をめぐるトラブルを生じる。立地に際して、ゴルフ場、
マリーナ建設、国立公園に対する各種の規制緩和が行われたのは、かかる理由に基づく。マリーナ建設
を中心とした海洋型リゾートでは漁業権との対立を生み出す。
 以上、リゾート開発資本を、不動産資本の空間的運動の新展開と位置づけ、その利潤の源泉、空間的
運動の特徴について簡単に考察した。
 また株式市場では、リゾート開発が大きな影響力を持っているといわれる。表4に見られるように
体の巨大な電鉄、大手不動産会社では、リゾート開発の収益への寄与度は小さいが、株価にプラスにな
りそうな材料が誇張されるので、リゾート進出が好材料として利用されている。

 リゾート開発が業績に大きく貢献すると考えられる企業は、大京、ミサワホーム、大和ハウス、東急
不動産である。大京の株価の目標は5,000円で時価2,680円のほぼ倍である。その他の企業も1.2〜2.0倍
近い株価の上昇を目標としている。相場は機関投資家主導型が続いていると言われる。リゾート開発は
、株価の上昇を通じて、金融機関を中心とした企業の新たな利潤の源泉にもなるだろう。
 最後に、リゾート開発資本の一事例として大和ハウス工業を取り上げ、検討してみよう。
 大和ハウス工業は、プレハブ業界の大手であるが、大規模な宅地開発にも実績がある。近年は住生活
全般をとらえ総合生活産業を目指し、会員制ホテルを中心とした観光事業、ホームセンター、不動産仲
介などへ多角化している。同社のリゾートホテル事業は1987年に能登ロイヤルホテルのオープンに始ま
ると言われ、88年末現在で、鹿部(北海道)、八幡平(岩手県)、宮城蔵王(宮城県)、浜名湖(静岡
県)、伊勢志摩(三重県)、霧島(鹿児島県)、残波(沖縄県)など、比較的交通の便のよい全国に14
ヵ所のホテルを持っている。96年3月期に40ヵ所(一万室)、会員数二万口、売上高一千億円を目標にし
ていると言われる。リゾートホテル事業は、一ヵ所50億円以上の投資が必要と言われ、総投資額二千億
円を予定している。現在、宿泊料金収入やクラブ会員の会費収入の合計が、前期だけで、二百億円と言
われるから、いかに巨額の投資であるかがわかる。従って、採算ベースに乗るに至っておらず、収益に
寄与し始めるのはあと2〜3年先と言われる。しかし、ホテル周辺の別荘地の販売(子会社の大和リゾー
ト、鹿部開発、能登ロイヤル観光、高千穂リゾートが販売を担当)がうまく噛み合えば、リゾート地の
イメージアップにつながり、同社の収益力は一段と向上すると言われている。(西野武彦『リゾート開
発の読み方』住宅新報社、1989年、「日本経済新聞」1989年4月18日)

 おわりに

 以上、リゾート開発のわが国の地域開発における歴史的位置づけ、内需拡大を中心とする経済構造調
整に果たす役割、リゾート開発の手法ならびに、リゾート開発資本の空間的運動の特質などについて考
察してきた。
 今後、余暇活動に対する国民のニーズは、益々、高度化、多様化することは避けられない。「国民の
健康にして文化的でかつ最低限度の生活」を保障するものとしての余暇活動のシステムが考えられるべ
きは当然である。この受け皿となる観光・レジャー産業は、地域産業の中でも大きな地位を占め、この
盛衰が地域の盛衰を決定することもある。
 リゾート開発は、大手のリゾート開発資本と地元の第三セクターで進められようとしているところが
多い。この第三セクターに、地元の総意が反映されることを期待したい。
 リゾート開発によって、地元が進出大資本の管理下におかれることは、なんとしてでも回避せねばな
らない。進出企業による十分な地元労働力の長期にわたる雇用、資材の購入、地元への協力などが十分
見込むことのできる場合に限って受け入れるべきである。
 次に自然環境への十分な配慮。自然環境は、リゾート資本や利用、滞在者のためというよりも前に、
地元住民、観光、レジャー産業のためのものである。
 こうした、リゾート開発をめぐる規制と誘導には、地方自治体、住民の果たす役割が大きい。リゾー
ト資本の空間的運動は、経済法則としての資本の論理であるのにたいして、受け入れる地元の生活の論
理を対置してみて、望ましいリゾート地建設が行われる必要がある。

【参考】
 <静岡県におけるリゾート開発の経緯>
1987・2・7 県は今後三年程度で、リゾート地域を整備するための調査・研究を行
      うことを決めた。六省庁が国会に提出する「リゾート地域整備促進法
      案」が成立すれば国の計画に乗って本県での大規模リゾートを実現さ
      せる方針。
1987・2・10 「伊豆観光21世紀プラン策定委員会」の初会合が開かれた。今後の方
      針として、@リゾート化、A温泉を中心とした健康管理をともなっ 
      たレクリエーション・スポーツゾーン化、B海洋レクリエーション 
      開発、C高原の開発・D長期滞在型の大型観光施設整備、が挙げら 
      れた。
1987・5・9 県は、県東部のゴルフ場造成凍結を全面解除することを決定した。
1987・5・18 国土庁は四全総に、余暇活動拠点整備の対象地域案をまとめた。
1987・7・14 フジヤマリゾート・コンベンション構想を打ち出している富    
      士宮市は、リゾート法による地域指定を得るため、「富士山麓地域広
      域リゾートエリア整備構想推進協議会」(仮称)を設立する。
1987・7・24 伊豆地区観光協議会は、リゾート法に基づく整備対象地域の指定獲得
      を目指す期成同盟会結成を発足させる予定。
1987・9・27 リゾート法の対象となる指定候補地域選びが難航しており、    
      このままではリゾート法の第一次指定から外れる公算も大きい。
1987・11・14 県は県総合保養地域整備連絡調整会議を設置した。同会議は、年度内
      に候補地の決定にこぎつけたいとしている。
1988・3・5 富士市は、環境管理計画を策定するために二ヵ年にわたって学術調査
      を実施する。策定までの二年間、開発計画は棚上げとなることから、
      実質的には二年間の凍結宣言。
1988・5・8 熱海市、伊東市などで、リゾートマンションの建設が急増している。
      熱海市では62年度の土地開発申請51件のうち48件がリゾートマンショ
      ン建設を目的とするもの。こうした傾向は南部の自治体にも広がって
      きている。
1988・4・19 県は、県マリーナ建設事業指導要項の新基準を、6月1日から施行する。
      民間企業による建設を認めるなど基準が緩和される一方、マリーナ建
      設を各市町村の振興計画に結び付けるために、設置者は市町村長の意
      見を添えて県に申請することになっている。
1988・5・28 県は、リゾート法に基づく県内候補地を、沼津、熱海、三島、伊東、
      富士、富士宮、御殿場、裾野の八市と伊豆長岡、函南、韮山、大仁、
      小山、長泉、清水、芝川、富士川、蒲原、由比の11町の県東部地域と
      する方針を固めた。首都圏に近く、民間のリゾート開発、未利用地が
      多いことが選定基準となった。総面積は約17万4000ヘクタール。伊豆
      南部は、半島振興法や観光21世紀プランで振興を図ることにした。国
      が将来二次指定もあり得るとしているため、次の選定の際は伊豆南部
      を最優先地域として位置づけることとした。
1988・5・31 リゾート開発の本県候補地が、ようやく正式決定にこぎつけた。「富
      士・伊豆国際リゾート推進協議会」(仮称)を設置し、具体的な重点
      整備地区などを決める基礎調査を実施した上で、1年後をめどに基本構
      想を策定し、国の承認を受ける。重点整備地区は8 〜10ヵ所程度を設
      定する方針。
1988・5・31 リゾート法の対象地域に決まった伊豆、富士周辺で、リゾート開発・
      構想が目白押し。スポーツワールド(伊豆長岡町)、初島リゾート開
      発(熱海市)、富士川を利用した公園構想(富士川町)、朝霧リゾー
      トゾーン構想(富士宮市)など。1988・6・23 伊豆観光21世紀プラン
      推進連絡調整会議が発足した。伊豆地域は、北部がリゾート法の対象
      地域として選定され、南部は半島振興法による整備が決まるなどして
      いるため、21世紀プランは伊豆の21市町村を一体としてとらえた唯一
      の構想となる。
1988・7・15 伊豆地域の広域的かつ長期的な振興を図る「伊豆観光21世紀プラン推
      進協議会」の設立総会が今日開かれた。
1988・8・10 リゾート法の指定にもれた伊豆中南部の振興施策をリードする「伊豆
      中南部地域振興協議会」の設立総会が開かれた。
1988・8・12 静岡県はリゾート法の指定を目指して選定を進めている重点整備地区
      に国土計画法による監視区域制度(土地取引の届け制)を導入する方
      針を固めた。重点整備地区は開発を促進するため税や融資面で様々な
      優遇措置が受けられるが、一方で土地の思惑買いなど地価上昇の引き
      金になる恐れがある。国土庁の公示価格(今年1月1日現在)で、リゾ
      ート法の指定候補地となっている県東部地区の地価上昇が著しかった
      こともあり、県は重点整備地区を監視区域に指定していくことになっ
      た。監視区域に指定されると、その地域区域にある市街化区域、市外
      化調整区域での土地取引について、届け出が義務づけられる面積の基
      準が引き下げられたり、取引内容についても審査が厳しくなる。こう
      したチェックで投機的な土地取引を抑えようというのが狙い。
1988・9・4 県は30日までに、地価高騰を防ぐため、10月1日に発表される基準地価
      の中で上昇率の高い商業地、住宅地を、国土利用法に基づく「地価監
      視区域」に指定する方針を固めた。地価監視区域制度は昨年8月から始
      まった。地価監視区域に指定されると、知事が任意に定めた面積以上
      の土地取引は、すべて知事への届け出が必要で、異常に価格が高い取
      引は県が値下げを指導する。静岡、浜松、沼津の中心部と、熱海、伊
      豆両市の別荘地が指定される見込み。このほか、リゾート法指定候補
      地は、8〜10ヵ所の重点整備地区を来年の法適用を待って地価監視区域
      にする予定だ。
1988・9・18 県は、リゾート法に基づく本県候補地「富士・伊豆国際リゾート地域」
      の整備概念をまとめ、関係19市町に通知した。各地域ごとに、今後リ
      ゾート地としてどのように整備していくかを示したもので、8〜10ヵ所
      程度設定する重点整備地区を来年決定する際にもこの概念は重要な要
      素となる。各地域の整備概念は次の通り。
      ◆富士東麓
        首都圏と隣接し先端技術産業の立地が著しいため、ビジネス機能
        や研究開発機能をリンクした新しいタイプの複合リゾート
      ◆富士西麓 
        広大な富士の景観を生かした牧歌的な高原リゾート
      ◆伊豆北部
        従来の温泉都市からの転換を図りつつ、新しい居住タイプにも対
        応した伊豆のエントランスゾーンにふさわしい生活文化タウンリ
        ゾート
      ◆富士川周辺 
        ふる里などの自然体験ができるリバーサイドゾーン
      ◆奥駿河湾周辺
        農林漁業との調和を図りつつ既存の都市機能の集積と海を生かし
        たマリンコンベンションタウンリゾート
      ◆富士南麓
        環境管理計画との調整があるために、さらに検討する。
1988・9・20 個々の市町村が将来の土地利用のあり方を定めておく国土利用市町村
      計画が、本県ではわずか11の市町村で策定されたにとどまっているこ
      とが、県地域振興課の調べでわかった。同計画は土地の有効利用を図
      り、乱開発を防止するために欠かせないと言われ、特にリゾート地域
      指定、伊豆観光21世紀プランなど数多くの構想を抱える東部地区で必
      要性が高まっている。しかし、リゾート指定地域では19市町村のうち
      まだ12市町が未策定、伊豆観光21世紀プランの20市町村についても16
      市町が未策定のままでいる。このうち、この二つの大きな構想にダブ
      って含まれている三島、熱海、伊東、函南、伊豆、長岡、韮山、大山
      の7市町は、県の強い指導対象になっている。1988・10・1   県が発表
      した基準地価調査結果によると、県の平均地価上昇率は7.0%と前年の
      3.3%を大幅に上回った。これにより、監視区域制度(土地取引の届け
      出制)の導入に消極的だった本県も制度導入に追い込まれるのは必至
      とみられる。リゾートブームを反映し、平均上昇率では上位10傑に東
      部勢が8市町占めた。特に伊東市が首都圏からの別荘地需要の高まりを
      受けて20.6%アップと一躍トップとなり、同市富戸字小野間908の40で
      は82.7%という大幅な伸びとなった。
1998.10.4 県は、静岡、浜松、沼津市の商業地域を地価の高騰を抑える    
      監視区域に12月から指定することを決めた。指定期間は3年間    
      で、指定区域内では現在2千平方メートル以上となっている土    
      地取引の知事届け出義務を300メートル以上に引き下げる。た    
      だ、伊東市などが別荘地需要の高まりなどから80%以上の上    
      昇を記録したが、今回の指定からは外れ、今後の大きな課題    
      となりそうだ。
1988.10.15 日本経済新聞社が実施した「75市町村全調査」で県内の自治体がリゾ
      ート開発にきわめて高い関心を示していることがわかった。調査によ
      ると、リゾート開発を計画しているのは39市町村(52.0%)。地区別
      にみると、東部82.1%、中部55.6%、西部20.7%の順。開発の狙いは
      「地域活性化」を挙げているところが大半だが、「雇用創出」を挙げ
      ているところも半数以上に達し、「税収確保」も大きな要素の1つであ
      ることがわかった。リゾート開発に関心を持つ背景として、余暇時間
      の増大を挙げる自治体が多かった。開発手法をみると、リゾート開発
      の具体的な計画のある39市町村のうち、59.0%が民間事業、43.6%が
      第3セクター方式となっている。一方、開発に当たっての問題点や課題
      については、自然環境の破壊や災害発生に対する危惧や交通基盤の設
      備、土地取得問題など、共通したものが多く、開発に伴う利害調整と
      して、進出企業と受け入れ側である地元との調節を叫ぶ声が多かった。
      また、各種規制の緩和という国の対応を求める意見も強かった。
1988.10.21  静岡県は、富士国際リゾート構想推進協議会(会長斉藤知事)の初会
      合を開いた。出席者からは、地価高騰の抑制など、県に対する要望が
      相次いだ。
1988.11.3 下田市でここ数年、国土利用計画法(土地売買の届け出)に基づく大
      規模な土地取引の申請が急増している。国土計画法によると、都市計
      画域内だと5千平方メートル以上、区域外だと1万平方メートル以上の
      と地売買の取引は地元自治体に申請し、受理した市や町村が意見書を
      つけて県に送り、土地の適正価格の審査を受けて県知事が認可をする。
      下田市の申請件数は59と60年は5件だったものの、61年は9件と増加傾
      向を示し、62年は43件と激増、ことしはすでに49件に達している。同
      市は土地の詳しい利用目的まで把握しないが、東京近郊の土地高騰と
      リゾート開発などを目的とした不動産業者らの触手が熱海、伊東市か
      ら同市にまで及んできているものと分析している。
1988.11.10 沼津市南部地域整備構想調査実施委員会の初会合が開かれた。同機関
      は、市南地区の既存産業の振興・地域振興をベースとする開発構想・
      指針を策定、来年1月に整備方針。同市はこの指針に従って、来年3
      月までにリゾート整備の基礎調査を実施する考え。
1988.11.17 愛鷹山ろく地域や箱根西ろく地域は、建設省のビジネス・リゾート複
      合都市構想の候補地の一つに挙がっている。そこで住宅都市整備公団
      と県、沼津、三島両市が共同で東駿河湾環状道路周辺地域における多
      機能型新都市開発構想を策定する事になり、調査と策定作業を財団法
      人都市計画委員会に委託した。
1988.11.19 伊東市がまとめた同市内における近年のリゾート施設建設状況による
      と、リゾートマンション事業の建設は60年頃から急増の一途で、62年
      度以降の事業21件のうち16件までを東京都下の事業者が占めている。
1988.12.3 昨年5月、県東部のゴルフ場造成凍結が解除されて以来、130を越える
      業者ゴルフ場開発の打診をしている。富士宮、富士、御殿場の三市と
      小山町は、環境維持などの、理由で新しいゴルフ場造成を認めない方
      針を打ち出している。開発業者のほとんどが東京に本社がある。  
1988.12.7 県のゴルフ場造成凍結解除にリゾート法の施行が重なって、ゴルフ場
      開発の波が一気に押し寄せてきた富士宮市は今年6月、「ゴルフ場開発
      の取り扱いに関する基本方針」をまとめ、事実上の凍結方針を打ち出
      した。
1988.12.8  熱海、伊東市で分譲マンションの建設ラッシュが続く裏で 「地価高騰」
      「緑の破壊」などのヒズミが顕著に現れてきている。熱海市土地対策
      室によると、分譲マンション(千平方メートル以上)の承認申請は、
      昨年が48件、今年も43件が申請済み。試算によれば、もしすべてが建
      設されると部屋数は約25,000戸にのぼる。こうした土地の動きが時価
      を引き上げ、今年10月の基準地価公示では、伊東市、富戸が82,7%と県
      下一の上昇率を記録した。時価はここ数年のうちに3から4割はあがっ
      た、といわれる。また、熱海市では山間地の風致地区まで開発業者の
      触手が伸びており、同市の総合計画審議会では「”景観条例”など環
      境保全対策を十分に考えた土地対策を」と注文をつけたほどだ。
1988.12.13 リゾート構想の対象地域の各市町村は来年3月、県に提出する基礎調
      査の作成に入っているが、「地域の特性に適したリゾート整備」に戸
      惑っているところもある。地域分業と機能分担の観点からみる限り、
      まだ足並みがそろっているとはいえない。
1989.3.18 富士宮市はリゾート法に基づく重点整備地区の候補地として市内の朝
      霧高原地区と富士山麓地区の二カ所について調査、研究を進めてきた
      が、富士山麓地域は候補地としないことを決めた。市側と企業側の調
      整がつかなかったためで、県への候補地の申請は朝霧高原一カ所だけ
      となった。(以上は、「資料バンク」新聞各紙報道による。)

(静岡大学「法経研究」1989年10月/38巻3・4号より転載)